リーダーシップ不在なのに、どうでもいい細かなことには口うるさい日本のトップ

 小泉首相時代には、単なるお飾りがトップに立てる時代は終わったと思っていたが、民主党政権を見る限り、日本はまだまだノンビリしているようだ。
 内閣のトップである鳩山首相は、実権を小沢幹事長に握られ、何も決断できずに八方美人発言を繰り返している。それでも、子ども手当などのバラマキ政策を実行していれば、内閣支持率は底堅いのだから、いかにも日本的な「リーダーシップ不在だけど、しがらみや利害関係が安全網となって結果的に低位安定してしまう組織」である。この点でも、民主党政権は古い自民党政権とまったく同じだ。
 厚生労働省のトップである長妻大臣も、同じように年金記録問題、後期高齢者医療制度問題などで一切リーダーシップを発揮できず、自民党政権よりもその政策は後退し、官僚依存度が高まっている。短期間で年金記録問題を最大限処理した安倍政権とは大違いである。
 長妻大臣も、「ベターか、少なくともワーストではない政策」を常に批判して、「ベストな政策でなければ認めない」と息巻いてきた政治家だ。ところが、実際に本人は何もできずにベターな改革を破壊してワーストな状況を復活させていくだけという典型的な改革つぶしの定石であり、現在はすっかり“くそリアリズム”に落ち着いている。
 一方で、この手のお飾りトップは、どうでもいい細かなことには口うるさい。

「長妻昭厚生労働相は13日、日本年金機構の川越年金事務所(埼玉県川越市)を視察した。(略)長妻氏は待合スペース脇にある掲示板を見て『この場所ではお客さんは気づかない。字も小さい』と早速指摘。年金加入履歴の記入用紙についても『印刷の都合とはいえ書き込む欄も小さい』などと注文を連発した」(毎日新聞

 これが単なる小言レベルなら、苦笑しつつもやり過ごせるが、過剰なマイクロマネジメントになると、重大なミスを招きかねない。リーダーシップを発揮できないトップがマイクロマネジメントにこだわる時、決まってその作戦なり事業は失敗する
 民主党政権は、リーダーシップ不在でも選挙には負けない無難な布陣なのかもしれないが、このままではあと4年間かけて、わが国の土台がじわじわと浸食されていく。お飾りトップに国を預けていても勝手に経済成長して、外交や安全保障はアメリカが肩代わりしてくれるようなノンビリした時代は、もう来ないのである。つくづく、小泉・安倍政権が懐かしい。

MONEYzineニュース「不況で人気の資格1位はドラマで話題のあの資格 一方、弁護士や公認会計士も就職難になる時代に」(宮島理)

 不況で資格取得が人気だ。人気資格1位は現在ドラマでも話題のあの資格。一方、資格を取れば大丈夫という資格信仰にもかげりが見え始めた。【続く

鳩山首相の法人税減税示唆はまた八方美人なのか──対日直接投資の重要性

 鳩山首相が大企業を含む法人税減税を示唆。先月の内部留保課税撤回に続いて、ようやくビジネスの重要性がわかってきたのだろうか。もっとも、いつもの八方美人発言の可能性は高いから、明日には言ってることが変わってるかもしれない。

「鳩山首相は12日夜、首相官邸で記者団に、法人税率の引き下げについて『大企業、中小企業を含めて、国際標準を考慮しながら考えていく』と述べ、2011年度の税制改正で検討する意向を示した」(読売新聞

 構造改革においては、法人税減税は当然の政策である。内部留保についても、その使い道を批判するのは株主の役割なのであって、政府が口を出すことではない。
 法人税率を国際標準に合わせるか、それよりも低くすることは、対日直接投資の促進にもつながる。以前も少し書いたが、小泉政権下では、外国から日本への直接投資が増えた
 直接投資は単なる投資額の増大だけでなく、生産性を高めることが多いので、歓迎すべきことである。安易な移民政策と違って、外資導入は文化的摩擦も比較的少ない

対内直接投資残高対名目GDP比の推移(%)
      1980   1990   2000   2006
世界    5.0    8.2   18.2   24.8
フランス  3.9    7.0   19.6   34.8
ドイツ   4.0    6.5   14.3   17.3
英国    11.7   20.6   30.4   47.8
米国    3.0    6.9   12.9   13.6
カナダ   20.1   19.4   29.3   30.3
日本    0.3    0.3   1.1    2.5

 外資のことを「ハゲタカ」と呼ぶ人もいたが、日本への直接投資(対名目GDP比)は、2006年時点でわずか2.5%でしかなかった。世界平均の24.8%、ドイツの17.3%などと比べても、まだまだ低いものだった。それでも、昨今の反改革ムードにより、外資排斥的な政策が続いている。安全保障上の外資規制は当然のことなら世界各国で行われているが、日本の場合は業界参入障壁の側面が強すぎる
 対日直接投資の促進は、グローバル企業となった日本企業がビジネスの拠点を国内に置き続ける誘因にもなる。その日本企業をポピュリズム的にバッシングするような政策をとっていては、日本および外国のグローバル企業が日本にいなくなり、雇用はますます先細るばかりだ。生産性も低下するだろうから、経済成長もさらに鈍化していくという悪循環である。
 与野党含めた政界の反改革ムードを変え、構造改革を再び推し進めないことには、日本の中長期的な発展は望めない。

バラマキ政治の醜態──吉川教授を罵倒する自民党・尾辻氏、麻生予算を仕分けする民主党政権の喜劇

与謝野勉強会で尾辻参院議員会長が激怒

日テレNEWS24



 自民党の尾辻秀久参院議員会長がひどい。党内の勉強会に吉川洋・東京大学大学院教授が講師として招かれていることに対して、吉川教授の目の前で「いい加減にしろ!バカ者!いやいやいや、言わにゃいかん!いやいや、絶対に言わにゃいかんよ、こいつには!いい加減にしろ!こんなやつ、絶対に許さんからな!」と罵声を浴びせたのだ。
 経済財政諮問会議のメンバーである吉川氏の取りまとめで、小泉改革は社会保障費(自然増分)の抑制を実現した。福祉バラマキ派である尾辻氏は、吉川氏の方針と対立してきた。
 反改革ムードによって自民党が負けた2007年参院選を受けて、尾辻氏は社会保障費の抑制撤回を要求。麻生政権での骨太方針取りまとめの際には、激しく改革路線を批判した。

「『「骨太2006」なんて言葉を使ったら、誰も理解しない。選挙に負けたら責任を取るのか?』
 2200億円抑制の削除を唱える厚生労働族の尾辻秀久参院議員会長は、骨太2006を『踏まえ』とした原案の修正を求め政調幹部に食ってかかった」(産経新聞

 結果的に、社会保障費の抑制は撤回され、社会保障費は再び聖域となった。
 その麻生路線を継承し、さらに子ども手当などで福祉バラマキを拡大しているのが民主党政権だ。マニフェストでも、社会保障費の抑制撤回は明記されている。同時に、「コンクリートから人へ」というスローガンとは裏腹に、土建バラマキも復活させていることはこれまでも何度も書いてきた。
 菅直人副総理・財務大臣も、「大きな財政出動が必要と言ったのは麻生政権だ。2010年度予算も基本的な方向性を踏襲した」と、麻生路線の継承・拡大を公然と認めている。もしかしたら、バラマキ予算に対する批判をごまかすための「ジミンガー」として菅大臣は麻生政権を引き合いに出したのかもしれないが、実際に民主党政権がやっていることは麻生路線の劣化コピーなのだから、語るに落ちるという感じである。
 このように、中長期の財政再建目標はぶっつぶされ、福祉バラマキ、土建バラマキが行われていく一方で、事業仕分けというアリバイ作りが性懲りもなく行われている。

「政府の行政刷新会議(議長・鳩山由紀夫首相)は11日夜の会合で、各府省に予算監視・効率化チームを設け、2009年度予算の執行状況を点検する『行政事業レビュー』を5月末から実施する方針を決めた。各省版『事業仕分け』との位置付けで、自公政権下で編成された予算の無駄を役所ごとに洗い出し、11年度予算概算要求に反映させる」(時事通信

 麻生路線を踏襲して史上最悪の2010年度バラマキ予算を組んだ民主党政権が、麻生政権の2009年度バラマキ予算について「ムダ」をチェックしていく。これは何というコメディーだろうか。

 もし、小泉改革が歴史上存在しなければ、バラマキ政権下における事業仕分けも「やらないよりはやった方がマシ」ということで改革派から評価されただろう。しかし、聖域なく歳出を削減した小泉改革を見てしまった以上、改革派としてはそこが基準となる。独立行政法人・公益法人への補助金も、小泉改革で既に2.5兆円削減された。聖域だらけの民主党政権が、そこまで切り込めるとは到底思えない。
 それどころか、福祉バラマキ、土建バラマキのためのアリバイとして事業仕分けが悪用され続けていくことは、目に見えている。そのアリバイも、打ち出の小槌でないことは昨年の事業仕分けで明らかになってしまったわけだから、バラマキ支持派も前回のように堂々とはしゃぐことはできなくなるだろう。
 民主党内改革派が本気でムダ削減をしたいなら、最低でも「骨太2006」レベルの中長期目標を立てるべきだ。少なくとも、そうすべきだという声を上げることができなければ、改革つぶしに利用されていくだけである。

日本は歴史認識や戦争責任という昔話に花を咲かせるしかない隠居国家になってしまうのか

 産経新聞の「公明、与党の道再び? 『驚くほど10年前と似てきた』幹部も認める」という記事が興味深い。ただ、歴史は繰り返すようで繰り返さない。私が危惧しているのは、不毛なイデオロギー対立だけが強調されるようになるのではないか、という点だ。

「政府・民主党と公明党は10日、政府提出の『子ども手当創設法案』と『高校授業料無償化法案』を修正し、公明党の賛成も得て成立させることで一致した。(略)公明党は11年7月、自民、自由両党との連立政権に参加したが、国旗・国歌法案などの法案に賛成し、じりじりと距離を縮めた結果だった。政策実現の実績を掲げ、支持母体の創価学会の会員が『かつての敵』との連立を受け入れる環境を整えたのだ」(同記事)

 公明党との連立で自民党政権は安定したが、10年前は野党第1党の民主党が改革派であった。自民党内にも、勢いのある改革派がいた。そのため、改革派と既得権派の政策対立が次第に明白になり、各党が党内にねじれを抱えつつも、政策論争が進展していった。もちろん、私も改革派の1人として、小泉改革が進んでいったことは非常に望ましかった。
 しかし、現在の民主党は既得権派であり、党内改革派に勢いはない。もともと福祉バラマキ政策を好む公明党も、小泉改革に追従してしまったことを反省する動きから、既得権派となり、民主党との距離を縮めている。
 一方、野党第1党の自民党も既得権派に回帰している。新党の動きはあるが、いずれも既得権派のようだ。「みんなの党」は比較的改革派だけれども、政界再編の核というよりは、今のところ避難所のような印象である。
 つまり、公明党との連立で民主党政権が安定しても、政策論争が進展するような気配はない。かわりに、ガチリベラルとガチ保守によるイデオロギー論争だけが活発化しかねない。
 いや、政治がイデオロギー的な神学論争にかまけている間に、政府の介入がどんどん減っていくのであれば、それはそれで結構なこととも言える。しかし、与党も野党も既得権護持という点では結託しているから、政府の介入を強めつつ、表面的なイデオロギー論争をしていくことになるだろう。
 少子高齢化社会の堅実な成長モデルをいち早く構築しなければならない時期に、歴史認識だの戦争責任だのといった話をのんきにしている。まるで日本全体が定年を迎えて、みんなで昔話に花を咲かせるしかなくなった隠居国家のようではないか。そんな身勝手な成熟を許せるほど、こちらは豊かではないし、将来世代への責任を放棄することもできない。

陰謀論にハマる権力者ほど危険なものはない

 民主党の藤田幸久国際局長による陰謀論がワシントン・ポスト紙に批判された。藤田議員は「陰謀論とは一言もいってないと度々伝えた」と弁明しているようだが、過去にも同様の陰謀論を言っているので、苦しい言い訳だ。

「米紙ワシントン・ポストは8日付の社説で、民主党の藤田幸久国際局長(参院議員)が同紙に対し、2001年9月11日の米同時多発テロの犯人像に疑問を挟む発言などをしたとして『突拍子もなく、いい加減で、偽りがあり、まじめな議論に値しない』と酷評した。鳩山由紀夫首相が容認すれば、日米関係に影響するとも警告した。(略)
 藤田氏は、野党時代の08年4月の参院外交防衛委員会で、国際テロ組織アルカイダのオサマ・ビンラディン容疑者の関与に疑問を挟む内容の質問をした。今年1月発売の週刊朝日でも、米国は犯人を特定しておらず、ビル倒壊の原因も再調査すべきだとの持論を展開。こうした発言はこれまでも米国の対日専門家らに批判されており、日米間の新たな問題に発展する可能性もある」(朝日新聞

 もちろん、これは国際問題や国内の政局につながるようなことではない。朝日新聞は煽りすぎである。ただ、陰謀論気質というのは、藤田議員に限らない「民主党らしさ」の1つであることを指摘しておく。
 藤田議員の場合は同時多発テロ陰謀論だが、いわゆる永田メール事件では、原口議員が「闇の勢力」による陰謀論をほのめかしていた。また、「政治とカネ」にまつわる捜査では、野党時代から政権獲得後の現在に至るまで、民主党は幹部までが「国策捜査」という検察陰謀論を唱えてきた。
 郵政民営化陰謀論も忘れていない。小泉俊明議員は、「郵政民営化は郵貯、簡保の資金350兆円を『アメリカの財布』とすることに目的があった」と国会で発言している。
 このように、党内に広く陰謀論気質があり、今日も一般人には見えない陰謀と戦うことで大忙しなのが民主党なのである。
 民主党には、元官僚など出世コースから外れた(脱藩した)人が多いので、プライドをこじらせやすい傾向があるように思う。「今の自分がこんな境遇なのは陰謀の事実を知ってしまったからだ。出世コースを順調に駆け上がっている元同僚や、それに疑問を感じない一般大衆は、陰謀の事実も知らずに飼い慣らされている愚かな犬どもだ。本当に優秀なのは自分だが、闇の勢力によって不当に扱われている」という陰謀論気質になってしまうわけだ。
 陰謀論気質は根深いため、政権を獲得し、自分自身が絶大なる権力を手に入れても、相変わらず陰謀論から抜けきれない。「陰謀の事実に気づかぬ愚かな犬どもを善導しなければならない」となる。
 しかし、陰謀論にハマる権力者ほど危険なものはない。「愚かな犬ども」からプライドを傷つけられるようなことをされると、「ここまで言ってもわからないなら、陰謀の加担者と見なして“友愛”してくれるわ!」という方向に容易に転ぶ。スターリン的な粛清政治との距離はものすごく近いのである。
 権力者は、ありもしない陰謀と戦うのではなく、みずからを律しながら、自信を持って地道な現実問題の解決に取り組むべきだ。「民主党らしさ」の中でも、この陰謀論気質だけは早く改めてほしい。

日経ネットコラム「「Bcc」にしたはずなのに! やっぱりなくならないメールの誤送信」(宮島理)




 電子メールはすっかり使い慣れているから、誤送信なんてありえない──。そう安心していると、うっかりミスが発生しかねない。最近も、相変わらずメールの誤送信によるトラブルが目立っている。【続く

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宮島理
1975年生まれ。山形出身の大阪育ち。
東京理科大学理学部物理学科中退後、
IT系企業設立を経て1996年、
フリーライターに。現在は関東在住。
政治・経済・IT・科学など、
幅広いテーマを扱っています。
政財界やオピニオンリーダーへの
取材・インタビューも多数。
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