「すべての革新は比較することから生まれる。この革新、イノベーションこそが人類の変化を可能にした」(カルロス・ゴーン)

 日本企業とフランス企業の協業こそが、日産自動車を復活させた。1999年、業績悪化に苦しむ日産とフランスのルノーが資本提携。ルノーから派遣されたカルロス・ゴーンは、日産COOとしてリストラを断行した。
 ゴーンがまず行ったのは、日産の営業所や工場、テクニカルセンター、ディーラーなどを見て回る「世界行脚」だった。その中で、これまで見落とされていたサプライヤーからの指摘などを発見。現場から見た日産の問題点を踏まえた上で、「日産リバイバル・プラン」を策定した。
 1999年10月18日に発表されたリバイバル・プランは、2万1000人の人員削減、日本国内の5工場を閉鎖といった厳しい内容を含むものだった。また、「リバイバル・プラン着手の初年度に黒字化」「3年後までに有利子負債を半額に削減」「3年後までに営業利益率を4.5%に上げる」という目標も掲げていた。この目標が達成できなければ、ゴーン以下、経営陣は退陣することになっていた。
 一方、ゴーンは日本企業について、作業効率では優れているが、デザインやマーケティング、販売などの戦略が欠けていると考えていた。そこで、デザインを強化するために、リバイバル・プランの発表と同時に、日産デザイン部門にカー・デザイナーの中村史郎を迎えることを明らかにした。
 販売についても改革を断行した。日本国内にあった3000店の販売店の内、300店あまりを閉鎖することにしたのである。また、直営ディーラー100社の20%を削減することも決定した。削減した販売会社は、独立した経営者に売却。「販売会社の企業家意識を向上させること」が目的だった。
 ゴーンは日産にプランを押しつけるのではなく、合理性をもって対処し、従業員からの協力を取り付けた。

「それは改革の計画が単に上からの号令や、勝手な宣言によって押しつけられたのではなく、下からの意見を吸収しながら、きわめて建設的で、合理的な方法で練られたからです」(『カルロス・ゴーン 経営を語る』より)

 日本企業とフランス企業という異なったカルチャーがぶつかった時、重要となるのがクロスカルチャー・マネジメントだ。ゴーンは、日産とルノーが互いを尊重するよう心がけ、効果的な協業を実現していった。

「クロスカルチャー・マネジメントというのは多くの潜在的な要素を、企業にもたらすと思います。イノベーションもその1つです。技術の革新だけではありません。マネジメントのあり方、品質のあり方、コストやマーケティング活動、流通、すべてにおいて革新をもたらすと思います。つまり、いろいろな違いを比較することによって生まれるものだと思います。
 人類の歴史を振り返ってみると、物理でも数学でも芸術でも、あるいは社会学などでもそうですが、すべての革新は比較することから生まれています。この革新、イノベーションこそが人類の変化を可能にしました」(第7回国際女性ビジネス会議におけるカルロス・ゴーン基調講演より)

 こうした取り組みの結果、リバイバル・プランは目標を前倒しで達成。ゴーンは「この国の唯一の資源は人──つまり日本人です」と、日産従業員の努力を評価している。

■参考文献
カルロス・ゴーン+フィリップ・リエス『カルロス・ゴーン 経営を語る』(日本経済新聞社)
第7回国際女性ビジネス会議におけるカルロス・ゴーン基調講演より

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