「驚くべき価格差がすべて。ホットドッグは原価がいくらでもこの値段で売ることに意義がある」(イングヴァル・カンプラード)

 組み立て式家具を中心としたスウェーデンスタイルの家具デパートとして、日本でもすっかり定着したイケア。廉価な家具を世界中で売り出す一方で、店内レストランで提供されるスウェーデン料理も各国に浸透している。また、1本5クローネ(日本では100円)で提供されるホットドッグもイケアの名物だ。
 実はイケアは、2004年に「日常食品輸出企業」の賞を受けている。「スウェーデンのミートボールとコケモモジャム添え」などのスウェーデン食品を世界に広めた功績が称えられている。
 イングヴァル・カンプラードによって創業されたイケアは、1973年にスイス・シュプレイテンバッハに海外初店舗を出して以来、急速に世界に広がっていった。ヨーロッパだけでなく北米、オーストラリア、シンガポール、さらには南米、中国、日本へと、次々に出店を果たしていく。
 イケアが急拡大した背景には、1970年代に欧米を中心に隆盛を極めたカウンターカルチャーがあった。従来型の家具に対しても「反乱」が起き、「明るくシンプルなもの」が好まれるようになる。まさにイケアの提供する家具が、時代にマッチしたのである。
 イケアの企業理念にもこのことは明記されている。カンプラードがまとめた企業コンセプト集『ある家具商人の書』には、「簡素化は美徳である」とはっきり書かれている。
 もう1つ、イケアの企業理念で特徴的なのが「顕著な価格差」というコンセプトだ。このコンセプトを代表するものが、通常価格の半分以下の値段で販売されているホットドッグだろう。1995年にホットドッグを5クローネで売り出すと、2年後にはレストランおよび食料品部門の売上が60億クローネに達した。
 ただ、1本5クローネのホットドッグをカンプラードが提案した時、社内からは「粗利益マージンが低すぎる」と反対されたという。そうした声に対し、カンプラードは次のように反論した。

「その驚くべき価格差、そして一目瞭然のその値段こそが、このアイデアのすべてなのです。ホットドッグは、原価がいくらであろうと5クローネで売ることに意義があるのです。この取り引きに社運がかかっているわけではないし、大儲けはできなくとも、とにかくホットドッグ1本ごとに利益は出しているのです。つまるところ、そこが肝心なのです」(『イケアの挑戦 創業者は語る』より)

 その後もイケアでは、「顕著な価格差」を可能にした第2、第3の「ホットドッグ」的製品を送り出し続けている。たとえば10クローネでマグカップを売り出したところ、それまで年間70万個しか売れなかったマグカップが、1250万個も売れるようになった。
 一定の粗利益マージン確保といった経営上の“お約束”に囚われすぎずに、みずからの理念を追求する姿勢が、イケアの革新的な製品開発につながってきたのである。

■参考図書
バッティル・トーレクル『イケアの挑戦 創業者は語る』(ノルディック出版)

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